日銀:今月のETF買入実績はゼロ。「点検」では、出口戦略が議論されているのか?
出典:経済・物価情勢の展望 2021 年 1 ⽉
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2101b.pdf
金融政策運営については、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。
引き続き、
①新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム、
②国債買入れやドルオペなどによる円貨および外貨の上限を設けない潤沢な供給、
③ETFおよびJ-REITの積極的な買入れにより、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めていく。
当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。政策金利については、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している。(抜粋了)
総裁定例記者会見要旨公開(2020年1月22日)
https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2021/kk210122a.pdf
前回の会合で発表されました、3 月をめどに公表される予定の金融政策の点検の検討状況について教えて頂きたいのですが、総裁は 12 月の経団連の講演で、点検に関しまして、長く続けることで仕組みが硬化してしまっては、何にもならないというご発言をされています。特に、今、購入がずっと続いているETFの買入れなどについては、この硬化といえるかもしれませんが、現時点で、この仕組みの硬化という懸念がある部分については、どういう点にあるとお考えでしょうか。
(黒田総裁が、ETFに関する質問に対する答える事を避けるように、コロナ、Gotoトラベル、イールドカーブに話をそらしていた為、中略)
もう一点ですが、点検の内容を先取りすることは避けたいとおっしゃられている中で、あえて具体的に聞いて申し訳ないのですが、市場ではETFを株価水準が高い時に買い入れるのは避けるべきだとか、長期金利のコントロールについて、現在の変動許容幅をもっと拡げるべきだといった色々な意見が聞かれます。こうした点も点検に当っては、排除しないということでよろしいのか、総裁のお考えをお願いします。
(総裁の回答)3 月会合で、スタッフが点検したところを踏まえて色々な議論がなされると思いますので、その時点の金融政策決定会合でどういった決定がなされるかということを、今から先取りして申し上げるのは差し控えたいと思います。いずれにせよ、質問で意図されたようなことはよく分かりますが、次回の金融政策決定会合における議論と結論を私が先取りして何かを申し上げるのは適切ではないと思います。(抜粋了)
指数連動型上場投資信託受益権(ETF)および Purchases of ETFs and J-REITs |
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(億円) | ||||
(100 million yen) | ||||
左列:ETF買入実績 右列:下記参照ください。 |
J-REIT | 買入 年別合計 |
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2010年 | 284 | 22 | 306 | |
2011年 | 8,003 | 643 | 8,646 | |
2012年 | 6,397 | 446 | 6,843 | |
2013年 | 10,953 | 299 | 11,252 | |
2014年 | 12,845 | 372 | 13,217 | |
2015年 | 30,694 | 921 | 31,615 | |
2016年 | 43,820 | 2,196 | 887 | 46,903 |
2017年 | 56,069 | 2,964 | 898 | 59,931 |
2018年 | 62,100 | 2,940 | 564 | 65,604 |
2019年 | 40,880 | 2,892 | 528 | 44,300 |
2020年 | 68,449 | 2,904 | 1,147 | 72,500 |
2021年1月 | 2,004 | 228 | 27 | 2,259 |
2021年2月 | 0 | 168 | 12 | 180 |
2021年3月 | ||||
2021年合計 | 2,004 | 396 | 39 | 2,439 |
過去合計 | 342,498 | 14,292 | 6,766 | 363,556 |
ETF 右列:設備投資および人材投資に積極的に 取り組んでいる企業を支援するためのETF |
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https://www3.boj.or.jp/market/jp/menu_etf.htm | ||||
日経が高値更新を続けた年初においても、日銀は1月4日、15日、20日、28日の4営業日、各501億円相当、合計2,004億円のETF買入を行っています。
それが、2月はこれまでのところ、ETF買入はありません。一方、J-REITに関しましては、2月17日に12億円相当の買入を行っています。
前述の黒田総裁と記者団との答弁で、ETFの買入継続に関するコメントを避けた理由
これまでは、日銀は保有するETFやJ-REITは売らないと言われていました。(注:昨年11月のDocomo株の間接的売却は例外)
3月18日~19日の日銀会合に向けて点検中と黒田総裁が答弁しているのですから、議論されていることはETFやJ-REIT買入を単に控える方向に政策を変えるということだけでは十分ではありません。「買入に躊躇しない」と繰返し答弁されているのですから、「点検中」なのは、2010年から買入続けた35兆を超えるETFやJ-REITに関する出口戦略でしょう。
既に2021年の政府予算案に10兆円規模の「大学ファンド」が盛り込まれました。このファンドの投資先に、日銀保有のETFやJ-REITを活用する方法が議論されているのでは?と思料します。
次の議論は「出来る限り売り圧力にならない長期保有を前提とする投資家にETFやJ-REITを譲歩する方法論」として、政府が推進しているiDecoやNISA活用では?と考えます。
iDeco でしか購入できないTOPIX連動型のBOJファンドを新た創設する(私案)は、如何でしょう?